くらしきぬは岡山の倉敷で生まれました。
岡山といわれて、何を思い浮かべますか?
桃太郎、倉敷美観地区、果物、瀬戸内海・・・
たくさんの魅力を持つ岡山ですが、岡山は桃やマスカットの産地として知られる、日本きってのフルーツ王国なのです。
瀬戸内海に面する岡山は、温暖な気候で晴れる日が多く、果物の栽培にぴったり。
地元で作られた品質の高い果物をスーパーで気軽に買えることは、うれしい瞬間のひとつかもしれません。
くらしきぬのお客様に、シルクの心地よさとともに、岡山という土地の魅力もお届けしたいなと試行錯誤し、「はらぱん」を桃で染めてしまいました!
企画当初は、倉敷美観地区に佇む柳(やなぎ)や珈琲を活用した染色など、他にもいくつかアイデアが出ていました。
しかし素敵なご縁がつながり、このたび数量限定で「岡山の桃で染めたはらぱん」を発売できることとなりました。
どんな色に染まるのかは染めてみないとわからない、胸が高鳴る草木染め。
このコラムでは、「桃染めはらぱん」が作られるまでの工程をご紹介させてください。
桜が満開間近という季節に、染色と洗い加工を得意とするニッセンファクトリーさんを訪れました。ニッセンファクトリーさんは岡山の南に位置し、ジーンズの聖地として知られる倉敷の児島に工場を構えています。
8分咲きの桜を見上げる、くらしきぬ開発長。いいお天気でした。
ニッセンファクトリーさんは倉敷染も行う工場です。倉敷染とは、安全性と環境負荷に配慮した人と環境にやさしい繊維加工の安全認定のこと。
古くから繊維産業が栄える児島は、国立公園に指定される瀬戸内海に面する地域。繊維産業の発展と並行して、環境保全に関する独自の基準を作り、高いレベルの排水浄化基準などが設けられていたのです。
桃染めはらぱんの話に戻りますが、桃のピンク色は、桃の枝から抽出します。枝は倉敷の竹中農園という桃農家さんから提供していただきました。竹中農園さん、ありがとうございます!
桃農家さんは、収穫時期を終えた冬〜春にかけて、次の年に向けて枝の剪定を行います。剪定の際に生まれる、果樹栽培には不要となる枝を使用させていただいています。
まずはその枝を細かく切り、“チップ”と呼ばれる状態にします。この枝から、桃のやさしいピンクの色素が抽出されるのです。
枝はほんのり赤みを帯び、工場内にはかすかに桃の甘い香りが漂います。
はじめに元々のオフホワイトの「はらぱん」を湯洗いします。染める前に、少量の石鹸を入れて湯洗いすることで、繊維が水に馴染み、浸水しやすくなるのだとか。
チップは枝くずなどが出て製品に付着しないように袋に入れた上で、染色容器に投入。100度以上の蒸気で、色素を抽出します。
すると色の着いていなかった水がはっきりと目に見えるほど、赤く変化します。化学染料は一切使用していないのに、これほど鮮やかな赤が出るのに驚き。袋に入れていた枝からはすっかり赤みが抜けていました。
そこへ湯洗いを終えた「はらぱん」を投入すると、徐々にほんのりと桃色に。
すでに少し桃色がついていますが、より結びつきを強くするために媒染液を入れます。
媒染液の種類や媒染液を入れた後にどれくらい染色工程を繰り返すかによって、同じ植物でも染まり方が変わります。一筋縄ではいかないのが、草木染めの面白さ。色ムラが出ないように染めるのには、長年積み重ねた技術を必要とするようです。
すすぎの後は、脱水、乾燥を行います。
ニッセンファクトリーの難波社長。職人のオーラが滲み出ており、開発長と「あんな風に年を重ねたいねぇ」なんて話した帰り道でした。
このように自然の美しさと職人さんの技術をお借りして、桃染めはらぱんは誕生しました。
左が元々のオフホワイトのはらぱんで、右ができたてほやほやの桃染めはらぱんです。
染色することで繊維が細かく毛羽立ち、一層ふわふわっとした質感に仕上がりました。まるで本物の白桃のように、淡くやさしい風合い。シルクとウールの魅力を引き立て、いつも見ているはらぱんの表情がより柔らかくなったような気がします。
桃で染められた「はらぱん」を身に着けるとき、自分だけが知る豊かさを纏うようで、自然と口角が上がってしまいます。
草木染めは、自然や製品への愛着がより育まれるひと手間なのかもしれません。
このうれしさをぜひくらしきぬのお客様にもご実感いただきたいという思いで、「桃染めはらぱん」を発売いたします!
今回発売する「桃染めはらぱん」は数量限定。ショート・ハーフ・ロングすべての丈をご用意していますが、桃で染めた「はらぱん」をお作りするのは今回限り。
お求めの方はぜひお早めにチェックしてくださいね。